Introduction
誰もが 心の片隅に持っている「孤独」
誰もが 心の奥底で 必要としている「愛」
普通の形で「愛」を描くのではなくて、 突起した形で描きたい
恋人同士を描くのではなく、「一瞬の愛」を描く
そんなテーマが 頭の中でぐるぐる回っていた時、 世の中で事件が起こった。
世の中によく知られている事件だ。 その男は言葉巧みに女たちを自殺に追い込んだ。
大山千賀子は写真家でありイリュージョニストだ。 そんな事件からインスピレーションを得て、 おとぎ話のような 「一瞬の愛 」を美しい映画に 仕立て上げた。
Story
自殺願望を抱えた若者たちが同じ願望を共有するサイトで知り合うところから始まる物語を描く。
愛を求める孤独な10代の少女が、インターネットで「ルシアン」と名乗る理想的な男と知り合う。同じころ、ある連続殺人犯を追っていた警察は、同じ犯人が手を下したと思われる、3人目の女性の全裸遺体を発見した。遺体に暴行の痕跡はなく、犯行動機もわからないままで、捜査は難航していくが……。
About The Movie
「僕の名前はルシアン」は、さまざまな要素が混じり合っている群像劇である。大山千賀子は群像劇が好きなのだ。一人の主人公を最後まで追うのではなく、周りの人間を描き、彼らによって社会を構築して行く。
この映画は一組の家庭とその家族を取り巻く人物で描かれている。なぜ家族がそれらを必要としているか?仕事を人生と重ねている夫。満たされない気持ちを宗教に求める妻。うまく人生を退き切ろうと努力している姉。一歩踏み外したことで家族のみんなから危険視されている妹。
この家族と家族を取り巻く人々で物語は構成される。
また、写真家としての大山千賀子のライフワークとして「裸体」への取り組みがある。彼女の作品には必ず「裸」が登場する。「裸」は雄弁だからだ。
我々が纏っている肌の質感、テクスチャー、肌が持つ歴史。それらに魅了されている。自分として所有する唯一のものだからだ。
Behind The Scenes
この映画制作に6年もの歳月を要したのは大山の映像に対するオブセッションである。
初めて取り組む長編映画としてはとても大変なものだった。途中、女優の降板、カメラマンの立ち去り、録音部など、今まで経験したことのない世界が待っていた。しかし最後まで仕上げられたのはなんと言っても美術の磯見俊裕、撮影監督の市川修、物語を引っ張ってくれる情緒豊かなサウンドトラックを作曲してくださった篠崎正嗣さん。そして最後まで力強く演じて下さったキャストの皆さんの熱意だと思う。
大山は6mの深さのタンクを求めてロンドン迄水中撮影に出かけてしまった。エセックスというロンドンから東に1時間のところに天井も開くプールが存在していた。水中撮影のためのタンクで、クレーンで車を空から落とせる仕組みになっている。我々の撮影には訓練されたダイバーが2名タンクを背負って水底でスタンバイしていた。
最後に「僕の名前はルシアン」のキャスティングには時間がかかってしまったこと。いくつもの事務所に電話をかけ、訪問し、ルシアンのイメージを求めた。ルシアン探しには何ヶ月も要した。最終的に柳俊太郎を選んだのはワングランスだった。遠くに立っている彼を見た瞬時にルシアンだと思った。女を騙す癖のある役なのにこの役をやりたがる俳優は思った以上に多かった。
男ってそういうものなんだね。あとは事務所の問題だけだった。
Cast
警視庁第一課 刑事。姿の見えない犯人を追いかけている第一課の刑事。遺体からは衣服や証拠品は一切残されていない。全裸で手首にリストカットがある。部下から「自殺でしょうね?」「裸でか?」「裸でリストカットして自分を晒し者にするのか?」三木谷はこの一連の連続全裸事件に疑問を持っている。
ある会社の重役。出勤には運転手付きの車がお出迎え。常に携帯でビジネストークをしている。 家族との会話はない。友人はいないが仕事が彼の精神を満たしている。 妻の千枝子がエロ教祖に恋心を持っているのもわかっていない。
高校入試で失敗。親から見放される。姉はすでに一流大学 法学部に進学している。父は忙しい商社マン。母は暇を持て余して変な宗教に凝っている。友達はインターネット。インターネットで時々自殺サイトを訪問している。ある日「僕と新しい世界に行きませんか?」とメッセージが送られてくる。
不運な生まれでもユニークな性格をしている。世の中を俯瞰する鋭い眼力を持っている。自殺サイトと自殺の予行演習の繰り返し。親に捨てられ、養護施設で育った。ピンサロで一生懸命働いてお金を貯めている。生きていくビジョンに乏しく一定の場所にとどまることができない。
千枝子が一番大切にしているものダイヤモンドと世の中の常識。ホテルのような朝食を作ること。忙しい夫にかまってもらっていない。近頃はやりのエロで病気を治癒するという新興宗教にはまっている。近所のざぁますおばさま達にどう思われているのか気になって仕方がない。
ルシアンの同僚で事務員。同僚の仁科と恋仲にあるがルシアンに不思議な魅力を感じてある日、工場の2階で仕事をしているルシアンを訪ねる。
自殺であるかのような裸体が湖や川辺で発見される。暴行を受けたあとなどないことから 自殺と断定するが、上司の三木谷からは「裸で自殺をするのか?見せ物じゃあ、あるまいし」と詰められ、揺らぐ。 果たして裸体の遺体は殺害されたものなのか。
要領がよくて人にきにられる術を知っている。一流の大学に就職して一流の人生を歩こうとしている。何が一流なのかはどこに基準を置くかだ。今は英二のような都合のいい男を見つけるか、一流企業に就職するか・・・
ピンサロで雇われているポン引き。原宿で迷い子たちに目をつけ、ピンサロ嬢として 働かせている。ティシュー配りを行いながら原宿の陸橋のあたりを常にうろうろとしている。
あきる野市の警官。普段は事件が少ない。特に 阪神のファン歴は30年。
鉄工所の工員。事務員の紗栄子の恋人。 紗栄子が最近ルシアンに接近しているのでヤキモキしている。
ポン引きを雇って常にニューフェイスを探して店の繁盛させている 腕利き。ニューフェイスはいつも自分でテストしてから雇うことにしている。
ピンサロで雇われているポン引き。手下のポン引きに目当てを つけさせ、店へと誘導するチーフのポン引き。いつも原宿あたりを うろついている。
エロで病気や悩みを治癒するというあやしい教団を運営している。 連続裸体殺人事件の犯人と報道される。
Staff
この映画の構想を浮かべていたときにある事件が起こった。あの事件から自分の心の中に 宿していた塊が流れる水のように文字になっていき、生を得はじめた。心の中に潜んでいたピースがつながりはじめたのだ。長編映画を作るのは初めての経験。だから抱いているイメージをできるだけ忠実に映像として表現したかった。そしてユーロスペースでの上映が頭に浮かんだ。それが実現できて本当にうれしい。憧れの映画館での上映です。見てくださる方々と心を瞬時でも共有できたらと思っています。
Comment
今日、拝見できて良かったです。とてもまっすぐな映画で優しくみれたと思います。どこか懐かしくもあり80年代、90年代の良い意味でのピンク映画の自由さとよく似た清々しさを感じました。アカネのモノローグは言葉が幼く説明的なところもあるかと思いますが、とても有効で、視点もわかりやすいかと思います。ただ、もう少し見る人を信じて間を感じられるように厳選した方が良いかも、と思いました。ラストのみんなの欠伸の演出は好きです。面白かったですよ。上映に向けてまだまだ大変かと思いますが是非素敵な上映がなされることを祈っております。
大山さん 長編拝見しました。前半の不思議な感じが大山さんの世界観があって特に良かったです。長編としてのストーリーがきちんとあるので、最後まで飽きることはありませんでした。クライマックスも好きです。ジャーナリスティックなテーマを大山さんのアート感覚で作った作品で、あまり見たことのないテイストでとても好きです。あと、音楽、音響もいいですね。ちなみにチラシが見られなかった。ありがとうございました。
良かったですね。時間とお金をかけて完成したのですからたくさんの人に見てもらいたい。十分準備してね!私の中でも決して古くならない映画です。死体が美しく象徴的。オフエリアが流れていくー座間の事件は深く心につきささっています。
「よかったです」「すごく好きな作品です」
昨日はありがとうございました。面白かった、というよりはズシンと重いものを感じました。感想シートは後ほど送らせていただきます。制作6年と伺いましたが、昨年か一昨年か、小田急沿線で自殺志願の人間が殺される事件があったように思いますが大山さんの映画は事件より先に暗示的に撮り始めていたんですね。時代に対する暗示的なものを感じてびっくりしました。お時間ができたらお会いしたいです。鶴川まで伺います。
こちらこそ、ありがとうございました 心の闇について考えさせられました。日本はこれだけの自殺大国ですから、スゴいものがあるのでしょう、、、また、ぜひお茶でもいたしましょう
ルシアンという事で、ひょっとして…と思いつつ、ほぼ寝て居ない寝不足状態で伺いったのですが、眠くなるどころか、どんどん引き込まれて。心の中で語りながら展開してゆくストーリー。チカさんのセンスの良さで単にドロっとした物ではなく、ヨーロッパの映画のようなアート作品を観賞させて頂きました。私の単なる感想なので、チカさんの意図する所と違って大勘違いだったらお許しを。夕食を食べながら、廉に話しましたら、行けなかった事残念だったと。かなり盛り上がった夕食タイムでした。私ももう一度観たいです。ハァーイ。結構衝撃を受けました
ありがとうございました。 前よりだいぶ進化して驚きました。どこが違うのか、即座には、わかりませんが、メッセージは伝わってきました。山本さんもよかったと言ってました。長い長い挑戦ですね。上映とか、ネットフリックスと契約とか、ハードル高いんですかね。みんなどうしてるんでしょうね。
でも観ている間ドンドン引き込まれていきました。アヴァンギヤルトな作品でした。音楽と効果音が映像に合ってて結構興奮しました。
PCで観るのと大きな画面で観るとこんなに印象が変わるものかと思いました。
同じバージョンですよね?
チカ監督
今日はお招きくださってありがとうございました。帰りに試写会を見た河合正人さんとお茶飲みながら話したのですが、監督は若い人のことを良く理解してるね、ということでした。俳優たちはちゃんと魅力的だねという点でも一致しました。河合さんが上げたネガティブな点は音があれ程大きくい必要はないのではないかといってました。特に重低音は脅かし過ぎかもと。多少サウンドとも関係しますが、予想と違っていたのはもっと淡々としたアートフィルムを想像をしていました。でもメロディやアレンジは美しいと思いました。
といいつつも、主人公の2人が魅力的に撮れているので2時間があっという間に過ぎてました。退屈はまったくしない美徳にあふれていて、そこはやはり監督のセンスの良さと情熱の賜物だと思います。
本日は貴重な時間をありがとうございました。冒頭部分は観れず途中からでしたが、ルシアンもミミもミミの家族も全ての人の根本的な部分(愛に飢えていること)は人間みんな同じで表現の仕方が異なるから人の気持ちが離れたり、くっついたり、憤りを感じたりするんだと映画を通して感じました。愛の形を知るための冒険というか、真の愛とは何か、愛してるの言葉だけでは通じる人と通じない人、そこを乗り越えて感じる気持ちということが、自殺志願者が増えているこの世の中とリンクしていて、すごく心をうたれ、考えさせられる映画でした。
久々にお会い出来て素晴らしい作品を観せて頂き嬉しかったです♪途中、リストカットやらグロテスクな場面が有りましたが画像や色彩が相変わらず鮮やかで綺麗でした!流石チカさん!と思いました。早く一般公開出来る日を楽しみにしてます。追加 寄り添って人殺す死なないルシアンの方が目に焼き付いた罪悪感で人生一生彼は辛いと思うのです。亡くなってしまえばそのままだしね、、。なんて帰り道に考えてました、、。
鑑賞後に、ずっと脳内で音楽が鳴りやまず、壊れていく人間の心理の塊が胸の奥を浮遊する感覚があった。90年代っぽいファッションや描写は懐かしく感じ、繁華街・川・郊外など目まぐるしく変わるシーンは、観ていて心地よく、飽きることがなかった。特に刑事が迷走するシーンは観ていて楽しかった。
ナレーションの声に力強さを感じない部分があったのは残念だったが、裸で食事するシーンや空気感は、デヴィッド・フィンチャーの『セブン』を彷彿させた。
小説のようなモノローグと鬱々とした音楽が、独特な狂気と妖美な世界観を演出していました。結末に余白を持たせることで、ルシアンのその後が気になる終わり方だったのと、茜の最後は予想外でした。
映像としては全体的な色のトーンが世界観を演出しているように感じたのと、裸で食事をするシーンへのこだわりを感じました。手首を切るシーンなどは刺激が強く、全体的に好みが分かれそうです。
鑑賞後の印象としては、一般的な若い層を取り込むのは厳しい気がするので、ターゲットとしては文学を好む方や、少し上の世代といったイメージでした。沢山のきゅうりをカットしているシーンが一番狂気じみていて印象に残っています。
孤独におもいがちですが映画を拝見して自分自身家族の愛に気づき、自分を卑下して逃げていたことにも気づきましたし、家族の中での劣等感や逃げたい気持ち、誰かに縋りたい助けてあげたいなどの感情を抱きあかねに共感しました。4人目の犠牲者が浮かんでいる時の愛してるよとあかねにいう2回目のあいしてるに気持ちが揺れました。切ない愛を感じました。警察官と刑事さんの部下が真面目に仕事をこなすタイプで上司が感覚派で動く感じも社会の中であるように感じておもしろかったです。映画館で感じる映画の音も好きで日常の物音が心地よく素敵でした。
それぞれの孤独と愛が入り混じっていてどの登場人物にも共感できる部分があり、忘れられないと思います。
長文失礼いたしました。
友達と観に行きます。
またお会いできるよう頑張ります。
Theater
都道府県 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 | 前売 |
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東京 | ユーロスペース | 03-3461-0211 | 9/29(金) |
昼間は鉄工所で働く青年。 赤く熱された鉄の塊をハンマーで叩く毎日。無口で真面目。 家族も友達もいない不思議な男。 寂しいのか寂しくないのか自分でもわからない。 でも自分はほかの人とは違うと言うことは感じている。 自分の知っていることは悪いことなのか?それとも人を助けているのか?「俺は?俺は?いったい誰なんだ?」